神経経済学2.5
題名は「神経経済学」=「2.5」という意味。
「経済学」+「心理学」=「行動経済学」=「2.0」
「経済学」+「脳神経科学」=「神経経済学」=「2.5」
という感じ。
fMRI(機能的磁気共鳴画像)という人の脳の様子を直接のぞきこむことのできる装置を持ち込み、経済活動(情報処理)を脳神経科学で説明する、いわば神をも畏れぬ新学問である(かなり大げさだけど)。
2004年くらいに茂木健一郎氏が著書や講演で紹介し始めてから日本でも脚光を浴び始めているが、まだ日本語の著書もなく断片をネットで拾うことができる程度でしかない。
『脳と創造性』という著書で紹介したのが最初なのかな?(氏の著書は全部読んでいるので間違いないと思うけど)
どのような時にどれだけのドーパミンが放出されるか、すなわち、その人がどのようなことを「うれしい」と思うかということは、その人の生き方自体に関わることである。「ドーパミン・マネジメント」が人生を決めるのである。
文明を発達させ、生物としての生存自体はとりあえず保証された人間の殆どの欲望は、脳によってつくりだされ、脳によって消費される。脳の感情のシステムが人間の欲望を形作る。このような視点に立って、脳の感情の働きから、ダニエル・カーネマンらが進展させてきた行動経済学の成果を見直し、さらに発展させることを目指す「神経経済学(neuroeconomics)」という新分野が最近提案され、注目を集めている。
創造は、脳の価値判断のプロセスと無縁ではない。将来的には、神経経済学と創造理論の統一が視野に入ってくるだろう。
村山さんの関心領域にどんぴしゃにフィットするような紹介をしてますね(^-^)。
具体的な実績を見てみよう。
人間の不合理性の最たるものの一つに「双曲割引」という考え方がある。
双曲割引とは、簡単に言うと、
「遠い将来のことを考える場合には「忍耐強く」なることができるが、近い将来のことには「せっかち」になってしまう」
という人間の行動を表したものだ。
「近接効果」とか「アリとキリギリス仮説」とか「今ここ原理」(今ここが大事から)とか「時間割引率」なんて呼び名もついている行動経済学の中心的な命題だ。
例えば、
皆さんも覚えのあることばかりでしょう。
全く合理的ではない。
神経経済学は、この「双曲割引」の検証を完了している。
一般的な選択では「前頭前野(理性脳)」が働くが、近い選択では加えて原始的な「辺縁系(情動脳)」が働くという。「辺縁系(情動脳)」はドーパミン系ニューロンが多く衝動的行動に関わるとされており、近い選択ではせっかち度が上昇すること、すなわち衝動的行動(衝動買い)が「気持ちいい」ことが検証されている。
「情動は理性を駆逐してしまう」(ルドゥ)のだ。
またブランド効果などの検証も進んでいるらしい。
「コカ・コーラ」のラベルと「ペプシコーラ」ラベルを見せると、「コカ・コーラ」のラベルにだけ「辺縁系(情動脳)」が働き、ドーパミンが放出されているということも発見されたという。たとえ「ペプシ・コーラ」の愛飲者であっても「コカ・コーラ」のラベルのみ「気持ちよさ」を感じるんだそうだ!理由はわかってはいないが、これはホントだとすると、かなりおそろしいことだと思う。
「サブリミナル効果」のように、潜在意識をコントロールするようなことも可能になるのだ。
今後研究がすすみ、どんな刺激に対して「辺縁系(情動脳)」が働くのか、事例がどんどん出てくることだろう。
もしかすると、茂木氏のいうように、人間の創造性の向上に多くの貢献をするかもしれない。
できれば私もそれをいちはやくキャッチして、私自身の「ウリ」にしたいとも思う。
しかし、一方でそんな領域に踏み込んではいけないのでは?という懸念も抱く。
それよりもっと危惧するのは、この学問領域の成果が一部の権力者に握られたとき何が起きるか?である。。。